top of page

「30日退職」は本当にお得?

  • 執筆者の写真: あたけ
    あたけ
  • 5月13日
  • 読了時間: 5分

退職を決める際、

「月末より前に退職すれば、最後の月の社会保険料が引かれない」

という話を聞いたことがある方もいるかもしれません。


確かに、社会保険料は資格喪失日の属する月の前月分まで発生するため、月末退職か月末前退職かによって、最後に控除される社会保険料が変わることがあります。


たとえば、3月31日退職であれば資格喪失日は4月1日となり、3月分まで社会保険に加入します。

一方、3月30日退職であれば資格喪失日は3月31日となり、3月分は会社の社会保険ではなく、国民健康保険や国民年金などへ切り替えることになります。


一見すると「月途中の退職の方が得」に見えるこの選択ですが、退職日によっては、退職後の傷病手当金や出産手当金などの継続給付に影響することがあります。


退職後も傷病手当金・出産手当金を受けられる場合がある

健康保険には、退職後であっても一定の要件を満たせば、傷病手当金や出産手当金を継続して受けられる制度があります。

ただし、誰でも受けられるわけではありません。

退職後に継続して受けるためには、主に次のような要件があります。

  • 退職日までに、健康保険の被保険者期間が継続して1年以上あること

  • 退職日時点で、傷病手当金や出産手当金を受けている、または受けられる状態であること

  • 退職日に出勤していないこと

ここで特に注意したいのが、「継続して1年以上」という要件です。


パターン1:月末前退職により、ギリギリ1年未満になってしまうケース

たとえば、4月1日に入社して社会保険に加入した方が、翌年3月30日で退職したとします。

この場合、資格喪失日は3月31日です。健康保険の被保険者期間が、ちょうど1年に届かない可能性があります。


一方で、3月31日退職であれば、資格喪失日は4月1日となるため、1年以上の要件を満たせる可能性があります。

つまり、退職日が1日違うだけで、

  • 退職後の傷病手当金

  • 退職後の出産手当金

が受給できるorできない という差が出ることがあります。


もちろん、実際には個別の加入期間や給付の状況を確認する必要がありますが、「社会保険料を1か月分抑えたい」という理由だけで月末前退職にすると、退職後の給付で不利益を受ける可能性があるという点は注意が必要です。


パターン2:再就職後、早期に再離職した場合も注意

もう一つ注意したいのが、退職後に再就職したものの、短期間で再び離職するケースです。


たとえば、前職を月末前に退職し、その後すぐに別の会社へ就職したとします。新しい会社でも健康保険に加入したものの、体調不良や妊娠・出産などの事情により、早期に再び退職することがあります。


この場合、退職後の傷病手当金や出産手当金の継続受給を考える際に、

「退職日時点で継続して1年以上の健康保険加入期間があるか」

が問題になります。

前職と再就職先の健康保険加入期間を通算できる場合もありますが、間に空白期間があると、継続性が途切れる可能性があります。


特に、月末前退職によって前職の資格喪失日が早まり、その後の再就職までに空白期間ができている場合は注意が必要です。


目先では、月末前退職により社会保険料の控除が少なく見えるかもしれません。

しかし、その後に再就職し、さらに早期で再離職するような場面では、過去の加入期間のつながりが重要になることがあります。


結果として、「前職を月末まで在籍していれば、継続1年以上の要件を満たせたかもしれない」というケースも考えられます。


雇用保険の失業給付にも影響する場合があります

雇用保険の基本手当、いわゆる失業給付についても、退職日によって被保険者期間の数え方に影響する場合があります。

失業給付は、原則として離職日以前2年間に、雇用保険の被保険者期間が12か月以上あることが必要です。

雇用保険の被保険者期間は、単純に「何月から何月まで」と数えるだけではなく、離職日から1か月ごとに区切って、その期間に賃金支払基礎日数や労働時間が足りているかを確認するため、カウントに影響することもあります。


ただし、雇用保険は個別の賃金支払基礎日数や離職理由によって判断が変わるため、ここでは「退職日によって影響することがある」程度となります。


「社会保険料が引かれない=得」とは限らない

月末前に退職すると、最後の給与から社会保険料が控除されないことがあります。そのため、手取りだけを見ると得をしたように感じるかもしれません。

しかし、実際には退職月から、

  • 国民健康保険に加入する

  • 国民年金に切り替える

  • 家族の扶養に入る

  • 任意継続を選択する

などの手続きや負担が発生します。


まとめ

月末以外の退職は、社会保険料の控除だけを見ると有利に感じることがあります。


しかし、退職後の傷病手当金や出産手当金の継続受給、再就職後に早期で再び離職した場合の加入期間のつながり、雇用保険の失業給付の要件などを考えると、必ずしも得とは限りません。


退職日は、給与の締め日や会社の都合だけでなく、退職後の健康保険・年金・雇用保険の手続きにも影響します。


特に、健康保険の加入期間が1年に近い方や、退職後の給付を受ける可能性がある方は、「月末前に退職して社会保険料を抑える」ことだけを基準にせず、退職後の給付に影響がないかを確認してから退職日を決めることが大切です。

最新記事

すべて表示
年度更新で見つかる月変漏れ

そろそろ労働保険の年度更新の時期となりました。 弊社でも、顧問先様以外の事業所様からスポットでご依頼をいただき、年度更新のお手続きを進める機会が増えてきます。 年度更新は労働保険料を計算するための手続きですが、いただいた賃金台帳を確認していると、社会保険の手続きについても見直しが必要な点に気付くことがあります。 その代表例が、月額変更届、いわゆる月変の確認漏れです。 社会保険の標準報酬月額は、毎年

 
 
 
はじめての労災対応

①働く上で避けられない「労災」のリスクと正しい手続き方法 業務中・通勤途中の負傷=労災の取扱いとなります。 いざ直面すると会社を休む場合もあり、「何の書類をどこに提出するか」や「給与処理はどうするか」といった心配が起こります。 ②業務災害と通勤災害の違い 【業務災害】 業務に起因して発生したケガなど 【通勤災害】 通勤中の合理的経路でのケガなど ※経路を逸脱している場合などは労災認定とならない場合

 
 
 
社会保険の「同月得喪」とは? 入社月に退職したときの保険料控除を分かりやすく整理

社会保険の手続きで、実務上たまに発生する「同月得喪(どうげつとくそう)」があります。 これは、 社会保険に加入した月と喪失した月が同じ月になるケース をいいます。 たとえば、4月1日に入社して社会保険に加入し、4月7日付で退職した場合などが典型例です。 勤務日数が短く、月末在籍でもないため、「社会保険料は引かないのでは?」と思われがちですが、実際はそう単純ではありません。 今回は、社会保険の同月得

 
 
 

コメント


bottom of page