勤怠管理と残業代の基本チェック
- あたけ

- 8月27日
- 読了時間: 4分
更新日:9月3日
所定労働日数・所定労働時間を明確にする大切さと時間外手当の基礎単価計算の注意点
企業における勤怠管理や残業代計算は法律上の義務であると同時に、従業員との信頼関係を築くうえでとても重要です。その中でも会社の「所定労働日数」、「所定労働時間」を明確に定めることと、「時間外手当の基礎単価の算出方法」は実務で誤解やトラブルが生じやすいポイントです。今回はその重要性と注意点を整理します。
所定労働日数とは?
→会社が休日と定める日を除く労働者が働くべき日数のことです。
※会社によって「土日+祝日+お盆休み○日間+年末年始○日間」だったり「会社カレンダーで毎年定期に確定して配布」など決め方は様々です。
「特に決めていない」「仕事があれば働いてもらっている」ではそもそも時間外労働の計算が正確にできない状態です。
1.所定労働日数・所定労働時間を明確にする意味
●給与計算の基礎となる:月給制であっても、所定労働時間を基準にして時間単価を求めるため、曖昧なままでは正確な残業代計算ができません。
●労務トラブルの防止:従業員から「残業代単価がなぜその金額になるのか?」と質問を受けたとき、根拠を明示できなければ不信感につながります。
●就業規則・賃金規程との整合性:年間休日や1日の所定労働時間は就業規則やカレンダーで明示する必要があります。ここが揺らぐと法定労働時間との関係も不明確になります。
2.基礎単価の計算方法
時間外労働の割増賃金を計算する際の「基礎単価(時間単価)」は以下の式で求めます。
月額の基礎賃金÷所定労働時間(1か月あたり)
ここでの「所定労働時間」には2つの算出方法があります。
各月ごとの所定労働時間方式:月ごとの所定労働日数に基づいて時間数を計算する。
※正確ではあるが、月ごとに単価が変わるため計算が煩雑になる。
年間の所定労働時間を12で割った’’月平均所定労働時間’’方式:
※事務処理がシンプルで実務ではこちらが一般的
例)年間休日114日、1日8時間勤務の場合:年間所定労働時間=2,008時間→月平均167.3時間
3.よくある間違いやすい点
●法定労働時間と所定労働時間を混同する:法定は「週40時間」ですが、会社の所定はカレンダーで定める必要があります。
●計算に含める手当:家族手当・通勤手当・住宅手当(支給条件により含める場合も有)などは基礎賃金に含めない一方で、役職手当や業務手当、精勤手当は含める必要があります。
●月ごと方式と月平均方式を混在させる:一度方式を決めたら、規程に明記して継続的に適用することが重要です。
4.勤怠記録と残業代計算の実務経験から
実際に対応したケースでは、退職者から「残業代が本来の額より少なく支払われているのではないか」と指摘を受けた企業様より過去2年遡って先方が計算した残業代の再計算作業のご依頼がありました。
・日給者であったものの、所定労働日数や所定労働時間が明確に定められておらず、労働契約書も交わされていなかった。
・会社側が計算した時間外労働手当も、本来基礎に含めるべき手当を除外して算出していた。
その結果、過去の勤怠資料や採用時の資料を探していただき、四苦八苦して再計算を行った経験があります。2年分の未払い残業代も結構な金額となりました。
このように、勤怠記録の不備や所定労働時間の曖昧さは、未払い残業代リスクを高める大きな要因となります。
5.まとめ
所定労働日数・所定労働時間を明確にし、基礎単価の算出方法を規程に定めておくことは、正確な残業代計算の前提条件です。
加えて、勤怠記録を正しく残すことが、過去に遡っても説明ができる【会社の防衛策】となります。
曖昧なまま運用すると、未払い残業代の請求や従業員との信頼関係の悪化につながりかねません。
弊社では、自社の労働時間制度や勤怠管理を整理し、賃金規程に反映させるサポートを行っています。残業代計算や勤怠ルールに不安がある企業様は、ぜひご相談ください。
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