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2026年10月からカスハラ対策が義務化へ―企業が準備しておきたいこと

  • 執筆者の写真: あたけ
    あたけ
  • 11 分前
  • 読了時間: 5分

近年、顧客や取引先などからの暴言、過度な要求、長時間の拘束といった「カスタマーハラスメント(カスハラ)」が問題となっています。


これまでも、企業には従業員の安全や健康に配慮する責任がありましたが、法改正により、2026年10月1日から、企業にカスハラ防止のための雇用管理上の措置を講じることが義務付けられます。


今回は、法改正によって何が変わるのか、就業規則を含め、企業が準備しておきたい内容を解説します。


カスタマーハラスメントとは

改正法におけるカスタマーハラスメントとは、次の3つの要素をすべて満たすものをいいます。

  1. 顧客や取引先、施設の利用者などによる言動であること

  2. 業務の性質などに照らして、社会通念上許容される範囲を超えた言動であること

  3. その言動によって、従業員の就業環境が害されること

電話による暴言だけでなく、メールやSNSなど、インターネット上で行われる言動も対象になります。


具体的には、次のような行為が想定されています。

  • 暴行や傷害などの身体的な攻撃

  • 脅迫、中傷、侮辱、暴言、土下座の強要

  • 大声で怒鳴るなどの威圧的な言動

  • 同じ要求や苦情を繰り返す執拗な言動

  • 長時間の電話、居座り、不退去などの拘束的な言動

  • 契約内容を著しく超えるサービスの要求

  • 不当な損害賠償や金品の要求

  • 従業員の個人情報や私生活に関する要求

一方で、顧客からの正当な苦情や、商品・サービスの改善を求める意見のすべてがカスハラになるわけではありません。

要求の内容だけでなく、その手段や態様、頻度、継続性などを総合的に判断する必要があります。


法改正によって何が変わるのか

今回の改正により、カスハラ対策は企業の自主的な取組ではなく、法律上の措置義務となります。

業種や企業規模を問わず、事業主には、おおむね次のような対応が求められます。


1.会社の方針を明確にする

会社として、カスハラに対して毅然と対応し、従業員を守ることを明確にします。

また、どのような行為をカスハラと考えるのか、発生した場合にどのような対応を行うのかを、従業員に周知する必要があります。


2.相談窓口を設ける

カスハラを受けた従業員が相談できる窓口を定め、社内に周知します。

相談窓口は、既存のパワハラやセクハラの相談窓口と兼ねることも考えられますが、担当者がカスハラに適切に対応できるよう、相談受付の手順や判断基準を整えておくことが重要です。


3.発生時の対応方法を決める

カスハラが発生した場合には、事実関係を迅速かつ正確に確認し、被害を受けた従業員への配慮を行わなければなりません。

例えば、次のような対応が考えられます。

  • 上司や管理者への報告

  • 対応者の交代

  • 従業員を一人で対応させない

  • 顧客とのやり取りの記録や録音

  • 一定時間を超えた電話や面談の終了

  • 入店や利用の拒否

  • 警察や弁護士への相談

  • 配置転換、休暇の付与、医療機関への受診案内

特に悪質なカスハラについては、警察への通報や取引停止なども含め、あらかじめ対処方針と対応体制を決めておくことが求められます。


4.再発防止策を講じる

発生した事案を社内で検証し、対応マニュアルの見直し、研修の実施、複数名での対応体制の整備など、再発防止に向けた措置を行います。


5.相談者のプライバシーを守る

相談内容や関係者の個人情報を適切に管理し、相談したことや事実確認に協力したことを理由として、解雇、配置転換、評価の引下げなどの不利益な取扱いをしてはなりません。


就業規則には何を盛り込むべきか

カスハラ対策について、必ずしもすべてを就業規則本文に細かく記載しなければならないわけではありません。

ただし、会社の方針を明確にし、従業員に周知するためには、就業規則やハラスメント防止規程などに、次の内容を盛り込むことが考えられます。


①カスハラの定義

顧客、取引先、施設利用者その他の事業に関係する者から、社会通念上許容される範囲を超えた言動を受け、従業員の就業環境が害される行為をカスハラとして定めます。


②会社が従業員を保護する方針

カスハラに対して会社が組織として対応し、従業員に一人で対応させないことや、安全確保を優先することを明記します。


③相談・報告に関する事項

カスハラを受けた場合には、上司や相談窓口へ速やかに報告・相談することを定めます。


④相談者のプライバシー保護と不利益取扱いの禁止

相談者や関係者の秘密を守り、相談したことを理由として不利益な取扱いをしないことを定めます。


⑤従業員自身がカスハラを行わないこと

自社の従業員が、取引先や委託先などの従業員に対してカスハラを行わないことも重要です。

必要に応じて、服務規律に禁止事項を追加し、悪質な行為については懲戒規定と連動させます。


就業規則の変更だけでは不十分です

今回の法改正への対応は、就業規則に条文を追加するだけで完了するものではありません。

実際にカスハラが発生した際、現場の従業員が「どこまで対応すればよいのか」「いつ上司へ交代してよいのか」が分からなければ、制度が機能しないためです。

施行までに、少なくとも次の事項を確認しておきましょう。

  • カスハラに対する会社方針の策定

  • 相談窓口と担当者の決定

  • 現場から管理者への報告ルート

  • 対応を打ち切る基準

  • 録音や記録の保存方法

  • 警察や弁護士へ相談する基準

  • 被害を受けた従業員へのフォロー

  • 顧客対応に関する社内研修

  • 就業規則やハラスメント防止規程の見直し

  • 顧客向けのカスハラ防止方針の掲示

特に、介護、医療、福祉、飲食、小売、運送、建設など、顧客や利用者、その家族、取引先と直接接する機会が多い事業所では、業種や現場の実情に合わせた対応ルールを整えておく必要があります。


まとめ

2026年10月1日から、カスタマーハラスメント対策が事業主の義務となります。

企業には、会社方針の明確化、相談窓口の設置、発生時の対応、被害を受けた従業員への配慮、再発防止などが求められます。


カスハラ対策は、単に顧客からの苦情を拒否するためのものではありません。正当な意見や要望には適切に対応しながらも、従業員の人格や安全を害する行為については、会社が組織として対応する仕組みを作ることが重要です。


施行直前になって慌てることのないよう、就業規則やハラスメント防止規程、相談体制、対応マニュアルについて、早めに見直しを進めておきましょう。

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